Non-fixation TEP法の検討　第75巻07号1783頁

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巍江
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1 日臨外会誌 75( 7 ), ,2014 臨床経験東大宮総合病院外科小島成浩坂本嗣郎腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術におけるメッシュの固定の要否に関して, 海外からはto- tal extraperitoneal inguinal hernia repair(tep) 法での固定の有無で再発率に有意差はないとする報告がなされているが, 本邦からの治療成績に関する報告はない. 当院では2004 年 3 月よりTEP 法を導入し, 以後十分な症例経験を経て,2011 年 3 月からメッシュを固定しないnon-fixation TEP 法を基本術式とした.2011 年 3 月から2013 年 10 月までに同法で218 症例の手術を施行し, 平均術後観察期間 20.1カ月において判明している再発は 1 例 (0.46%) であった. 確実な手術手技のもとでnon-fixation TEP 法は十分継続可能な術式と考えられる. 索引用語 : 腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術, タッキング, 再発緒言腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術においてメッシュの固定を行う意義は, メッシュのmigrationに起因する術後再発の予防の一点であり, 再発率の増加がなければ固定は省略できるはずである. 当院では2004 年 3 月より total extraperitoneal inguinal hernia repair( 以下, TEP と略 ) 法を導入し, その後, 海外の臨床試験の結果をもとに2011 年 3 月からメッシュを固定しないnon- fixation TEP 法を基本術式とした 1)~4). 以後,200 例以上の non-fixation TEP 法の症例を経験するに至り, 本稿では当院における同法の術式と術後成績, および文献的考察を加えた検討を行ったので報告する. 適応および対象当院では, 全身麻酔が可能な成人鼠径ヘルニア患者すべてに対して non-fixation TEP 法を標準術式としている. 初発症例においても日本ヘルニア学会分類におけるⅡ- 3 型のような大きな内鼠径ヘルニア症例に対しては原則的には固定を行っている. 後述するが両側ヘルニアの場合, 以前は先行側のメッシュは固定していたが,SURGIMESH 導入後は両側ともに固定は行っていない. 再発症例および還納不能な巨大ヘルニア症例に対してはtransabdominal preperitoneal re 年 3 月 18 日受付 2014 年 5 月 4 日採用所属施設住所さいたま市見沼区東大宮 5-18 pair(tapp) 法を選択している. 腹膜前腔を操作する前立腺や膀胱の手術歴のある症例は前方アプローチによる Direct Kugel 法としている. この適応のもと,2011 年 3 月から2013 年 10 月までの間に当院で non-fixation TEP 法を行った218 例についての術後成績に関して, および2004 年 3 月から2013 年 10 月までの全 TEP 法症例 638 例の年次別の手術件数と再発数に関する検討を行った. 手術手技手術は全症例が固定した 2 名の外科医のいずれかによって実施され手術内容は定型化している. メッシュを固定しないため, メッシュが自然な形で折れ返りなく広がるように十分な腹膜前腔剥離を原則とし, これを安全かつ確実に行うため出血や腹膜損傷を最小限とした操作を心掛ける. 手術は臍部のカメラ用ポートおよび下腹部正中の操作用 2 ポートで行う (Fig. 1). 尾側の操作用ポートはメッシュ展開の際に頭側での妨げにならないよう恥骨結合から 3 横指頭側に配置する. 腹膜外腔拡張バルーンは使用せず, 腹腔鏡で観察しながらエネルギーデバイスで剥離を進める. 精細な画像下で任意に適切な層にアプローチできるという利点があるためである. 弓状線尾側に広がる腹膜前筋膜浅葉を確認し, その背側の腹膜前腔に意識的に入るようにしている (Fig. 2). この層は非常に疎であり出血なく剥離できる.Cooper 靱帯まで尾側方向に剥離を 19

1784 日本臨床外科学会雑誌 75 巻 Fig. 1 Two working ports are placed in the midline between the umbilicus and pubis.

3 Partial incision dashed arrow of the arcuate line arrow heads on its lateral edge to ensure the adequate lateral dissection necessary for mesh placement.

2 Opening of the superficial preperitoneal fascia arrow heads to enter the preperitoneal space arrow. Fig.

White arrow indicates the Cooper s ligament.

2 1784 日本臨床外科学会雑誌 75 巻 Fig. 1 Two working ports are placed in the midline between the umbilicus and pubis. The lower port is placed 3 finger breadths above the pubic symphysis arrow. ① camera port, ② ５ -mm port, ③ ３ -mm port. Fig. 3 Partial incision dashed arrow of the arcuate line arrow heads on its lateral edge to ensure the adequate lateral dissection necessary for mesh placement. PE, peritoneal edge ; IEV, inferior epigastric vessels. Fig. 2 Opening of the superficial preperitoneal fascia arrow heads to enter the preperitoneal space arrow. Fig. 4 A mesh SURGIMESH XD- 3D was placed in the preperitoneal space without folding. Black arrow indicates inferior epigastric vessels. White arrow indicates the Cooper s ligament. 進め内側は恥骨結合をやや超えるところまで剥離しずつ丁寧に剥がし落とすことによって腹膜損傷や出血ておく下腹壁動静脈外側の膜の癒合部を鈍的剥離したのち癒合部頭側の腹壁直下で弓状線を頭側に少し切開を回避できると考えており本手技は TEP 法の手技の安定に寄与した重要な手法であるしておく Fig. 3 弓状線の高低は個人差が大きいがヘルニア嚢を結紮切離後にメッシュを腹膜前腔に挿これにより外側剥離のウィンドウが広がるとともに入する Non-fixation TEP 法の定型化後は ParietexTM メッシュ展開の際の頭側での折れ返りを予防するため Anatomical Mesh の９ 13cm のサイズのものを使用重要なポイントとなる操作であるしていたが 2013年６月より導入した SURGIMESH 下腹壁動静脈外側の剥離した空間で腹膜縁を確認 XD- 3D は適度な硬さと組織親和性から展開が容易し腹膜前筋膜深葉を把持して腹膜縁を内背側に剥がでありまた安定性に優れるため両側症例でも固定をし落とすイメージで背側剥離を進める腹膜側を少し行わずに留置できる通常は10 13cm のメッシュを 20

3 7 号 1785 使用しておりトリミングは全く必要ない. メッシュ下縁よりも背側に腹膜縁があるように配置し, メッシュの折れ返りがないように十分注意する. メッシュを適切な位置に配置したら送気を停止し, 脱気を間欠的にゆっくり行う. この際, 一方の鉗子でメッシュ全体を固定しながら, もう一方の鉗子で腹膜の背側からの滑り込みやメッシュの折れ返りがないことを細かく確認 Table 1 Clinical characteristics and operative results of 218 patients who underwent Non-fixation TEP. Number of patients 218 Age (y) Mean 58 Range Sex Male 192 Female 26 Sites of hernia Unilateral 208 Bilateral 10 Mean operative duration (min) 75 Mean follow-up period (months) 20.1(3-34) Postoperative complications Seroma 2 (0.92%) Infection 0 (0%) Chronic pain 0 (0%) Recurrence 1 (0.46%) する (Fig. 4). 結果 2011 年 3 月から2013 年 10 月までにnon-fixation TEP 法で218 症例の手術を施行した. 男性 192 例女性 26 例で, 平均年齢は58 歳 (21~83 歳 ) であった. 片側ヘルニアが208 例, 両側ヘルニアが10 例であった. 平均手術時間は75.0 分. 平均術後観察期間 20.1カ月において術後慢性疼痛は認めておらず, 判明している再発は 1 例 (0.46%) であった (Table 1) 年 3 月から2013 年 10 月までに行った全 TEP 法症例 638 例の年次別の手術件数と再発数の推移を見ると,TEP 法手術症例数の増加に伴い再発数は減少している (Fig. 5). メッシュを固定するTEP 法を基本術式としていた2004 年 3 月から2011 年 2 月において計 10 例の再発があるが, 確認できた 9 例のうち 8 例が内側再発であり, 再発までの平均期間は30.2( 6 ~91) カ月であった. 考察一重に鼠径ヘルニア手術といっても手術内容はアプローチの選択, 使用するメッシュの選択など, ますますバリエーションに富んできているが, 池田が述べているように鼠径ヘルニアの術式選択に関する議論において, 本質的に重要であるのは術後再発率である 5). メッシュの固定の省略もバリエーションの一つであるが, 海外で行われた臨床試験では,TEP 法において Fig. 5 Trends in number of patients who underwent TEP, and that of postoperative recurrences. 21

4 1786 日本臨床外科学会雑誌 75 巻メッシュ固定の有無で再発率に有意差はないと報告されている 1)~4). 医学中央雑誌 webで検索対象年を1983 年から2013 年 10 月までとし, TEP TAPP メッシュ固定のキーワードで検索した範囲では, メッシュを固定しない腹腔鏡下ヘルニア手術の術後成績に関する和文報告はなかった. 固定を行う場合 dangerous zoneへのタッキングを避けることは必須であるが,non-fixation TEP 法であれば当然ながら nerve entrapmentを心配する必要はない. また,minimally invasive surgeryを追及するという観点からは省略可能な体内異物は極力少なくするべきであるし 6), 症例数の多い鼠径ヘルニアにおいてはタッカー分のコスト削減による経済性も重要である. Non-fixation TEP 法の導入当初は特に術後早期再発の発生が心配されたが, 現在のところ再発症例は術後 4 カ月に再発をきたした 1 例のみである. この 1 例はnon-fixation TEP 法 85 例目の,BMI 30.4の左内鼠径ヘルニア (Ⅱ- 2 ) 症例であり, 再発形式は内側再発であった. 手術動画を検討すると, 不良な術野のもとCooper 靱帯背側でメッシュが腹膜縁に乗るように配置されていた. 現在のクオリティをもって検証すると再発を招いたポイントは明らかであるが, これは逆に成熟した確実な手術手技をもってすればメッシュの固定が省略可能であることを裏付けていると考えられる. 当院での再発数の年次推移からもnon-fixation TEP 法導入による術後再発の増加はない可能性が示唆されるが, 導入前とは観察期間が異なるため今後も継続的な評価が必要である. 適応に関して先に述べたように当院ではⅡ- 3 型のような大きな内鼠径ヘルニアに対してはメッシュの固定を行っている.Hesselbach 三角の広い範囲での脆弱性により, メッシュのmigrationが危惧されるためであるが, 固定を要するヘルニア門のサイズに関する検討は今後の課題のひとつである.Lauらの報告ではヘルニア門が 4 cm 以下の場合にはTEP 法においてメッシュの固定を省略しうると結論付けている 7). 一方で, 小規模ながらヘルニア門のサイズによらないとする報告もある 8). 現段階ではヘルニア門の大きい内鼠径ヘルニアに対して固定の省略は難しいが, 今後の症例の蓄積の中で成績を検討したい. 結語メッシュを固定しない non-fixation TEP 法の術後成績に関する報告は本邦では初めてとなる.TEP 法において適切な手術手技のもとでは術後再発を増加させることなくメッシュの固定は省略しうると考えられた. 文献 1)Garg P, Nair S, Shereef M, et al : Mesh fixation compared to nonfixation in total extraperitoneal inguinal hernia repair : a randomized controlled trial in a rural center in India. Surg Endosc 2011 ; 25 : )Teng YJ, Pan SM, Liu YL, et al : A meta-analysis of randomized controlled trials of fixation versus nonfixation of mesh in laparoscopic total extraperitoneal inguinal hernia repair. Surg Endosc 2011 ; 25 : )Taylor C, Layani L, Liew V, et al : Laparoscopic inguinal hernia repair without mesh fixation, early results of a large randomized clinical trial. Surg Endosc 2008 ; 22 : )Tam KW, Liang HH, Chai CY : Outcomes of staple fixation of mesh versus nonfixation in laparoscopic total extraperitoneal inguinal repair : a meta-analysis of randomized controlled trials. World J Surg 2010 ; 34 : ) 池田正仁 : 腹膜外腔アプローチによる腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術 TEPP. 外科治療 2009;100: ) 川原田陽, 小野田貴信, 岩城久留美他 :TEP 法. 消外 2013;36: )Lau H, Patil NG : Selective non-stapling of mesh during unilateral endoscopic total extraperitoneal inguinal hernioplasty ; a case-control study. Arch Surg 2003 ; 138 : )Beattie GC, Kumar S, Nixon SJ : Laparoscopic total extraperitoneal hernia repair : mesh fixation is unnecessary. J Laparoendosc Adv Surg Tech A 2000 ; 10 :

5 7 号 1787 NON-FIXATION OF MESH IN LAPAROSCOPIC TOTAL EXTRAPERITONEAL INGUINAL HERNIA REPAIR Shigehiro KOJIMA and Tsuguo SAKAMOTO Department of Surgery, Higashiomiya General Hospital Application of tack fixation of mesh during laparoscopic inguinal hernia repair is controversial in these days. It is reported in overseas countries that there is no significant difference between fixation and nonfixation of mesh in total extraperitoneal repair (TEP) with respect to postoperative recurrence rate. However, no reports on the therapeutic outcomes from such a viewpoint have been presented in our country. Since March 2011, we have performed non-fixation TEP as the basic procedure in consecutive 218 cases. During a mean postoperative follow-up period of 20.1 months, postoperative recurrence occurred in only one case (0.46%). Non-fixation TEP is a reliable method in the inguinal hernia repair when done by experienced surgeons. Key words:laparoscopic inguinal hernia repair,tacking,recurrence 23

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2. 主婦パートの能力 2.6 個人正社員経験主婦パートの 9 割以上が正社員経験あり主婦パートに正社員 (または正職員 )でどのくらいの期間働いていたかを聞いたところ全体の 91.6%に正社員で働いた経第 8 回社会保障審議会短時間労働者への社会保険適用等に関する特別部会平成 23 年 11 月 17 日資料 4 平田未緒委員 ( 株式会社アイデム人と仕事研究所所長 ) 提出資料 2. 主婦パートの能力 2.6 個人正社員経験主婦パートの 9 割以上が正社

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