はしがき 1 地方公会計検定の実施が発表され その案内とプレテストが開催されましたが 予想をこえて大きな反響を呼びました 純粋の民間事業でありながら この大きな盛り上がりは 地方公会計の重要性をあらわしています 地方公会計は 当初の 資産と負債の整理 というどちらかと言えば 消極的なコンセプトから出発しましたが その後 公共施設等総合管理計画 への活用等を経て 自治体経営の 用具 から 今では経済財政諮問会議の重要テーマとして 日本の構造改革の一翼に位置付けられています 成長のためには 構造改革が不可避であります その意味では地方公会計の役割は とても大きいと思われます 2 地方公会計によって まず各地方公共団体の財政の状況が正確につかまれねばなりません 国債の圧倒的な累積の類推から 地方財政の危機が 無内容に叫ばれたり 知恵と勇気のなさ の口実に 財政危機 が使われていないでしょうか 地方財政の本当の問題はどこにあるのか 私たちは今こそ正しいデータをもとに検討しなければならないと考えます 第一次公会計の中で 私達は全ての地方公共団体が資産更新問題 ( 老朽化への対応 ) をかかえていることを知りました 一方で国家に膨大な借金がある限り 戦争 のような浪費がなかったのですから 他方で膨大な資産があることも 考えてみれば 当然のことであります 公的資産は一方で私たちにはかり知れない便益をもたらしていると同時に 将来の負担ともなっています 問題は単純ではありません こうした中で正しい解答を得るためには 正しいデータが必要であります 簿記の役割とはそのようなものであります 3 バランスシートで読みとく世界経済史 と 帳簿の世界史 という二つの好著が 一昨年 昨年と続けて発刊され 多くの注目を浴びました 二つとも近代社会の誕生に於いて 簿記 が果たした役割が生き生きとえがかれています 日本では国家の中枢に これほど簿記が影響を与えたことはなかったと思います これが現在のさまざまな経済上の問題の発生とは無縁ではないのでしょう 公会計はこうした視点からも重要だと思われます 経済活動全体の 1 / 4 を占める 中央 地方の国家組織の財政に 正規の簿記 が普及すること これを通じて 国のかたち 地方のかたち が変わっていくことを願わずにはおれません 平成 28 年 5 月 一般社団法人地方公会計研究センター
本書の利用方法 項目ごとに全体像を把握しましょう 1 本文の読解前に学習項目の目次を確認し 全体像を掴みましょう 目 次 6 第10節 第1章 全体像をイメージ 地方公会計財務書類の様式と関係 第1節 財務書類の対象範囲 2 第2節 財務書類の相互関係 3 第3節 帳簿記入の流れ 13 公 第3章 仕訳例 第1節 歳 1 2 3 第2章 第2章 4 地方公会計特有の論点 5 地方公会計特有の論点 貸倒引当金 企業会計 2 2 1節 総 ⑴第貸倒引当金 6 論 26 本文を一読してみましょう 7 第貸倒引当金とは 商品 製品などを販売することによって生じた売掛金 受取手形な 2 節 現金 歳計現金と歳計外現金 27 8 どの売上債権や貸付金などの残高が期末に存在する場合 次期以降に回収不能になる可 積額のう 貸方科目 うもので 本文中の重要語句は太字になっていますので 太字箇所は特に注意して読み進めていきま 第 3 節 棚卸資産 28 能性があり この貸倒れに備えて設定する引当金をいう この貸倒引当金は 貸倒損失 を販売年度の売上収益で負担するために引当てられる しょう 1 棚卸資産の範囲 28 ⑵ 貸倒引当金の設定対象額 2 棚卸資産の取得原価 28 また 重要項目が一目でわかる図解もついていますので 図解と照らし合わせて確認すると 貸倒引当金の設定は 金銭債権 将来において金銭の支払いを受ける権利 が対象と 9 第2節 公会計における棚卸資産 29 1 第 4 節 未収金 長期延滞債権 30 ら生じた営業外債権に分類され 営業債権はさらに 売上債権とその他の営業債権に分 2 3 なる 金銭債権は 企業の主たる営業活動から生じた営業債権と主たる営業活動以外か 効果的です 類される 第 5節 基 4 売上債権 受取手形 売掛金など その他 営業活動上の貸付金 立替金など 営業債権 有価証券 出資金 33 第7節 営業外債権 営業債権以外の貸付金 立替金など 繰延資産 34 重要語句も 引当金 36 図解でスッキリ 1 総 論 36 め 営業債権 異常なものを除く は 損益計算書上 販売費及び一般管理費に表示す 2 貸倒引当金 企業会計 37 る また 営業外債権 異常なものを除く は 損益計算書上 営業外費用に表示す る 3 徴収不能引当金 公会計 44 4 賞与引当金 企業会計 45 5 賞与等引当金 公会計 46 6 退職給付引当金 企業会計 47 7 退職手当引当金 公会計 56 8 債務保証損失引当金 企業会計 58 9 損失補償等引当金 公会計 58 ⑶ 3 金 32 第6節 金銭債権 貸倒引当金繰入の損益計算書上の表示 第8節 5 第3節 貸倒引当金繰入は 当期の全体的な収益を得るのに必要な費用として考えられるた 引当金を 第9節 2 4 歳 リース資産 59 1 リース取引 59 2 ファイナンス リース取引に係る借手の会計処理 企業会計 60 3 オペレーティング リース取引に係る会計処理 企業会計 64 4 ファイナンス リース取引の判定基準等 企業会計 65 5 リース資産およびリース債務の計上額 借手 68 37 歳 1 2 第4節 歳 1 2 3 第5節 非 1 2 3 4 5 6
3 範例を確認してみましょう 範例を解答して本文の理解度を確認してみましょう 地方公会計財務書類の様式と関係 第1章 範例 1 1 財務書類 4 表の関係 第1章 答案用紙 単位 百万円 以下の資料を参照して A市の財務書類 貸借対照表 行政コスト計算書 純資産 貸借対照表 変動計算書 資金収支計算書 を作成しなさい なお 資料から判明すること以外 行政コスト計算書 資料 各財務書類の項目の金額 固定資産 ① 619 500百万円 現金預金以外 流動負債 11 200百万円 純資産 第1章 2 行政コスト計算書 書 純資産 経常費用 700百万円 固定負債 行政コスト計算書 経常費用 ⑭ 3 純資産変動計算書 流動負債 ① 485 100百万円 ⑤ 臨時損失 財源 109 900百万円 純行政コスト ② 現金預金以外 ③ 純資産 各自推算 資産評価差額等 16 800百万円 ⑥ 純資産変動計算書 各自推算 投資活動収入 ⑱ 業務活動支出 前年度末純資産残高 資産評価差額等 137 900百万円 10 500百万円 ⑳ ⑲ 財務活動収入 ⑦ 本年度末純資産残高 ⑪14 000百万円 業務活動支出 123 900百万円 財源 ⑥ 投資活動支出 23 100百万円 答えがわかったら答え合わせをしてみましょう ⑧ ⑫ 投資活動収入 投資活動支出 財務活動支出 財務活動収入 財務活動支出 ⑪ 本年度末純資産残高 ⑬ ② ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ ⑰ ⑱ ⑲ ⑳ 14 700百万円 間違ったらもう一度本文を確認 ⑬ 5 600百万円 前年度末資金残高 ⑨ 前年度末資金残高 本年度末資金残高 本年度末資金残高 ⑩ 各自推算 ② 10 4 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ 練習問題を解答してみましょう 本文の中に ⑬ ⑭ ⑯ ⑰ ⑲ ⑳ ⑮ 問題集 第 1 ⑱編 問題 2 1 といった表現がされている箇所があります これは そこまでの内容で姉妹編の 地方公会計問題集 応用編 別売 の該当問題が解 答可能であることを示していますので 問題集をお持ちの方はぜひチャレンジしてみましょ う 11 ⑥ 本年度末資金残高 ⑩ 前年度末純資 ⑲ ⑫ ⑨ ⑱ ⑱ 資産評価差額等 財務活動支出 前年度末資金残高 純行政コスト 本年度末純資産残高 業務活動収入 ⑰ ⑮ 4 資金収支計算書 資金収支計算書 業務活動収入 財務活動収入 純行政コスト 前年度末純資産残高 純資産変動計算書 純行政コスト 投資活動支出 ⑧ 臨時利益 各自推算 ⑥ 業務活動支出 投資活動収入 ⑯ 5 600百万円 ④ 純行政コスト 現金預金 ③ ⑦ 経常収益 135 800百万円 臨時損失 固定資産 流動資産 ② 業務活動収入 28 000百万円 臨時利益 貸借対照表 ること以外 現金預金 現金預金以外 資金収支計算書 各自推算 答案用紙 単位 百万円 経常収益 ⑮ 本文や図解を参照 しながら答えを 考えてみましょう 地方公会計財務書類の様式と関係 臨時損失 純資産 流動資産 9 800百万円 158 900百万円 純行政コスト ⑤ 各自推算 臨時利益 ⑭ 流動負債 流動資産 固定負債 経常費用 ④ 1 貸借対照表 うち 現金預金 経常収益 固定負債 は 考慮しなくてよい 固定資産 地方公会計財務書類 財源
目次 第 1 章 地方公会計財務書類の様式と関係 第 1 節財務書類の対象範囲 2 第 2 節財務書類の相互関係 3 第 3 節帳簿記入の流れ 13 第 2 章 地方公会計特有の論点 第 1 節総論 26 第 2 節現金 ( 歳計現金と歳計外現金 ) 27 第 3 節棚卸資産 28 1 棚卸資産の範囲 28 2 棚卸資産の取得原価 28 3 公会計における棚卸資産 29 第 4 節未収金 長期延滞債権 30 第 5 節基金 32 第 6 節有価証券 出資金 33 第 7 節繰延資産 34 第 8 節引当金 36 1 総論 36 2 貸倒引当金 ( 企業会計 ) 37 3 徴収不能引当金 ( 公会計 ) 44 4 賞与引当金 ( 企業会計 ) 45 5 賞与等引当金 ( 公会計 ) 46 6 退職給付引当金 ( 企業会計 ) 47 7 退職手当引当金 ( 公会計 ) 56 8 債務保証損失引当金 ( 企業会計 ) 58 9 損失補償等引当金 ( 公会計 ) 58 第 9 節リース資産 59 1 リース取引 59 2 ファイナンス リース取引に係る借手の会計処理 ( 企業会計 ) 60 3 オペレーティング リース取引に係る会計処理 ( 企業会計 ) 64 4 ファイナンス リース取引の判定基準等 ( 企業会計 ) 65 5 リース資産およびリース債務の計上額 ( 借手 ) 68
6 統一的な基準における規定 ( 公会計 ) 70 第 10 節公債 74 第 3 章 仕訳例 第 1 節歳入科目 ( 特定 ) 78 1 地方譲与税 78 2 税交付金 79 3 地方特例交付金 79 4 地方交付税 80 5 交通安全対策特別交付金 80 6 分担金及び負担金 81 7 使用料及び手数料 82 8 繰入金 83 9 諸収入 84 第 2 節歳出科目 ( 特定 ) 86 1 人件費について 86 2 需要費 87 3 役務費 89 4 扶助費 91 5 補償 補填及び賠償金 92 第 3 節歳入科目 ( 仕訳複数例 ) 94 1 財産売払収入 ( 固定資産 ) 94 2 基金繰入金 96 第 4 節歳出科目 ( 仕訳複数例 ) 98 1 投資及び出資金 98 2 積立金 99 3 繰出金 100 第 5 節非資金仕訳 102 1 リ-ス資産 102 2 満期保有目的有価証券等の強制評価減 105 3 満期保有目的以外の有価証券の評価 106 4 投資損失引当金 107 5 徴収不能引当金 108 6 歳計外現金 109
第 4 章 固定資産台帳の実務 第 1 節固定資産台帳の概要 119 1 固定資産台帳と仕訳伝票 119 2 建設仮勘定明細表 119 3 リース PFI 明細表 119 第 2 節固定資産台帳の業務フロー 122 1 新年度開始 1 123 2 記帳 仕訳の締切 4 123 3 作表等及び検証 6 123 4 期末整理 台帳閉鎖 7 123 5 決算手続の進行管理 8 123 第 3 節固定資産増減異動情報の取得 124 1 歳入歳出を伴う場合 124 2 歳入歳出を伴わない場合 125 3 台帳への記帳について 125 第 4 節固定資産の増減事由 126 1 増減異動事由 126 第 5 節償却計算と耐用年数の基本事項 127 1 償却計算と耐用年数の基本 127 2 資産登録単位の原則と開始時における特例 127 3 資本的支出の耐用年数の扱い 128 4 一部除却の場合の償却計算の方法 128 5 使用可能期間を耐用年数とできる場合 128 6 複合資産の耐用年数及び用途変更に伴う耐用年数 128 7 中古資産の耐用年数 129 8 備忘価額の計上 129 第 6 節減価償却計算の特例 130 1 標準減価償却 130 2 資本的支出 131 3 償却資産の一部増加 132 4 償却資産の分割と一部除却 133 5 償却資産の耐用年数変更 134
第 7 節一般の固定資産増減にかかる仕訳 135 第 8 節リース資産の仕訳 139 第 9 節固定資産台帳の集計 140 第 5 章 注記及び附属明細書 第 1 節注記 142 1 重要な会計方針 142 2 重要な会計方針の変更等 142 3 重要な後発事象 143 4 偶発債務 143 5 追加情報 143 第 2 節附属明細書 145 1 貸借対照表の内容に関する明細 146 2 行政コスト計算書の内容に関する明細 154 3 純資産変動計算書の内容に関する明細 155 4 資金収支計算書の内容に関する明細 156 第 6 章 連結財務書類 第 1 節連結会計総論 ( 企業会計 ) 160 1 連結財務諸表 160 2 連結財務諸表作成における一般原則 161 3 個別財務諸表と連結財務諸表 162 第 2 節連結手続 ( 企業会計 ) 164 1 取得日連結 164 2 子会社の資産および負債の時価評価 164 3 投資と資本の相殺消去 166 4 連結会社相互間取引の相殺消去 173 第 3 節連結財務書類の対象範囲と連結の方法 ( 公会計 ) 174 1 財務書類の対象となる会計 174 2 連結財務書類の対象範囲と基本的な考え方 175 3 連結対象団体ごとの連結の方法 176
第 4 節連結決算日 179 第 5 節連結財務書類の体系 180 第 6 節連結財務書類の作成手順 183
第 1 章 第 2 章 地方公会計財務書類の様式と関係 地方公会計特有の論点 第 1 節総論第 2 節現金 ( 歳計現金と歳計外現金 ) 第 3 節棚卸資産第 4 節未収金 長期延滞債権第 5 節基金第 6 節有価証券 出資金第 7 節繰延資産第 8 節引当金第 9 節リース資産第 10 節公債 第 3 章第 4 章第 5 章第 6 章 仕訳例固定資産台帳の実務注記及び附属明細書連結財務書類
第 2 章地方公会計特有の論点 1 第節総論 民間会計 ( 企業会計 ) とは異なるルールに基づいて作成された官庁会計の決算内容は 民間で広く理解されることは難しいのが実情である よって 公会計では民間会計のルールに準じて官庁の決算を作成公表することになった 更に 統一的な基準ではより理論的な観点から民間会計を意識して変更が加えられた しかし 元々 地方公共団体特有の資産の存在や考え方があり それらを反映したものでないと地方公共団体の実態を正確に表すことができないことになる 従ってそれら留意すべき項目につき 下記に説明していく ( 注 1 ) 仕訳を起こすタイミングによって 発生の都度仕訳を行う方式 ( 以下 日々仕訳という ) と 期末に一括して仕訳を行う方式( 以下 期末一括仕訳という ) の 2 方式がある 下記においては 日々仕訳を前提として記載している ( 注 2 ) 条文の引用については 次のような表記とする 財務書類作成要領 : 要領資産評価及び固定資産台帳整備の手引き : 資産評価手引き地方自治法 : 地自法地方自治法施行令 : 地自施 26
第 2 章地方公会計特有の論点 2 第節現金 ( 歳計現金と歳計外現金 ) 地方公共団体が保有している現金には 大別して歳計現金と歳計外現金がある 歳計現金とは地方自治法第 235 条の 4 に規定される地方公共団体の歳入歳出に属する現金である 一方 地方公共団体に属しない現金を歳計外現金 ( 歳入歳出外現金 ) という 具体的には地方公共団体職員の給与に係る源泉所得税や住民税そして公営住宅の敷金などがあり 民間会計 ( 企業会計 ) における預り金である こうした歳計外現金は地方公共団体の支払いに充てることができない理由から地方公共団体の本来の活動とは区別して取扱われる また 地方自治法第 235 条の 4 第 2 項では 債権の担保として徴するもののほか 普通地方公共団体の所有に属しない現金または有価証券は 法律又は政令の規定によるのでなければ これを保管することができない と規定されている しかし 職員給与の源泉所得税等は 支払事務上 付随して発生するものであるため実務的には省略することはできない 従って 歳計外現金に関する従来の公会計上の処理については 地方公共団体の保有する現金として計上するか否かは はっきりしていなかった そこで 今回の統一的な基準では 地方公共団体の保有する現金として正式に貸借対照表に計上される扱いとなった ( 要領 114) 但し 資金収支計算書のなかでは欄外に歳計外現金の収支を計上することになっており 歳計現金と歳計外現金の収支結果を合算して貸借対照表の現金として計上されることになっている ( 要領 218 219) 仕訳例 A 市では 地方公共団体職員の給与支払いにおいて住民税 500 000 円を預かった ( 本年度歳計外現金増減額 ) 500 000 ( 預 -CF- り 金 ) 500 000 -BS- B 市では 市営住宅の入居者から敷金として 100 000 円を預かった ( 本年度歳計外現金増減額 ) 100 000 ( 預 -CF- り 金 ) 100 000 -BS- 27
製品 ⑴ 第 2 章地方公会計特有の論点 3 第節棚卸資産 1 棚卸資産の範囲 ( 棚卸資産の評価に関する会計基準 3 28 29 30) 棚卸資産は 商品 製品 半製品 原材料 仕掛品等の資産であり 企業がその営業目的を達成するために所有し かつ 売却を予定する資産の他 売却を予定していない販売活動および一般管理活動において短期間に消費される事務用消耗品等が含まれる この棚卸資産の範囲は次のとおりである ⑴ 通常の営業過程において販売するために保有する財貨または用役 ⑵ 販売を目的として現に製造中の財貨または用役 ⑶ 販売目的の財貨または用役を生産するために短期間に消費されるべき財貨 ⑷ 販売活動および一般管理活動において短期間に消費されるべき財貨 製造業 ⑶ 原材料卸売業 小売業 ⑵ 仕掛品半製品 商 ⑴ 品 ⑷ 事務用消耗品 用品 2 棚卸資産の取得原価 ( 連続意見書第四 第一 五 ) 購入品と生産品の取得原価は次のとおりである ⑴ 購入品の取得原価購入品の取得原価は 購入代価に引取費用などの付随費用の一部または全部を加算して決定される 購入代価と付随費用を具体的に説明すると次のようになる 1 購入代価購入代価は 送状価額から値引額 割戻額などを控除した金額とする 2 付随費用 ( 副費 ) 副費には 引取運賃 購入手数料 関税などの外部副費と 購入事務費 保管費などの内部副費がある ⑵ 生産品の取得原価生産品の取得原価は 適正な原価計算基準に従って算定された正常実際製造原価をもって決定する 28
第 2 章地方公会計特有の論点 3 公会計における棚卸資産棚卸資産とは 売却を目的として保有している資産をいう ( 要領 118) 特に民間会計と異なる点はないが 地方公共団体自体が多岐にわたる業種業態を扱っているため 多様な棚卸資産が想定される 具体的には 個別の事業におけるパンフレット類 ( 量的重要性により計上の有無が判断される ) から土地開発公社における販売用土地まで考えられる 仕訳例 A 市では a 事業で作成したパンフレットの販売を行い 300 000 円の収入があった なお パンフレットについては 前期末において棚卸資産として 200 000 円が計上さ れていた ( 資 ( 棚 産売却収入 ) 300 000 ( 棚 -CF- 卸 資 産 ) 100 000 ( 資 -BS- 卸資産 ) 300 000 -BS- 産売却益 ) -PL- 100 000 問題集問題 2 1 29
第 2 章地方公会計特有の論点 4 第節未収金 長期延滞債権 未収金とは 通常 決算日から起算して 1 年以内に回収される債権であり 1 年を超えて回収が予定される場合の長期未収金と区別される 公会計の場合は 現年調定現年収入未済の収入等と定義される ( 要領 115) 換言すれば 調定手続きを経たが未だ徴収できていない収入分が未収金となる 地方公共団体においては調定という独自の手続きがあり これは歳入の発生した権利内容を具体的に確認する自治体の内部的意思決定の行為となる そして この手続きを行ったうえで納税義務者に対して納税の通知がなされることになる ( 地自法 231 条 地自施 154 条 ) つまりは 調定は債権の確定手続きを意味し 通知が行われる 未収分には 発生の時期により過年度分と現年分に分けられるが 過年度分の未収分については 4 月 1 日に調定手続きが行われ 当年度分については出納整理期間の終了に伴い 6 月 1 日に調定手続きが行われることになる なお 上記手続きは税金や使用料手数料の徴収だけでなく貸付金の回収も対象となる 貸付金も回収期限が到来するものにつき調定の手続きが行われ 一旦 未収金の計上仕訳が行われる そして年度中に徴収が行われた際に未収金の取崩がなされることになる また 最初に調定の手続きを経た未収金の回収期限が 1 年超にわたる長期のものについては 長期延滞債権に振り替えられる ( 民間会計における長期未収金や更生債権に該当する ) 30
第 2 章地方公会計特有の論点 仕訳例 A 市では 固定資産税 10 000 000 円に関する調定手続きが行われた ( 未 収 金 )10 000 000 ( 税 -BS- 収 -NW- 等 )10 000 000 A 市では 固定資産税 9 000 000 円の徴収を完了した ( 税 収等収入 ) 9 000 000 -CF- ( 未 収 -BS- 金 ) 9 000 000 A 市の期末 ( 年度末 ) 処理仕訳なしなお 期末一括仕訳では 下記のようになる A 市では 固定資産税 10 000 000 円に関する調定手続きが行われた 仕訳なし A 市では 固定資産税 9 000 000 円の徴収を完了した 仕訳なし A 市の期末 ( 年度末 ) 処理 ( 税 収等収入 ) 9 000 000 -CF- ( 税 収 -NW- 等 ) 9 000 000 ( 未 収 金 ) 1 000 000 ( 税 -BS- 収 -NW- 等 ) 1 000 000 問題集問題 2 2 31
あとがき 1 複式簿記は 長い歴史をもった 体系的技術 であります 個々の原理は それぞれ決して難解なものではありませんが 千差万別の取引を分類するわけですから 一つのまとまりある体系として理解することは 容易ではありません したがってその 原理 を抽象的に追及する 学 の世界は別にして 一般には 多くの事例の訓練により 体得 することに主眼が置かれてきました コンピューターシステムにおける簿記の処理は正確性と迅速性に於て 大きな役割を果たしたのですが 実践による体得 という点では 問題を残しました ここに 簿記教育 がもつ重要な役割があると考えます 公会計も同じであります 公会計システムの整備が進んでおりますが それを取り扱う人材養成が 火急の課題となっています システムの自動化が進めば進むほど それを取り扱う人の方は 原理の理解 が進んでいなければなりません 私たちの講座はそれを目指していますが 果たして皆様方のお役に立てたでしょうか 2 公会計には 民間会計と比重の置き方がちがったところがあります 例えば補助簿である固定資産台帳の位置は全くことなります 公会計では これは 民間の売掛元帳 買掛元帳 原価台帳の役割を果しています また 連結会計の比重もちがいます これは民間組織と公的組織の編成のちがいに由来しています 私たちの検定は前者は 3 級 2 級で後者は 2 級 1 級で扱うことにしており 1 級の 活用問題 とも相まって これらに対応することとしました 首尾よく 目的の果たせることを願っています 一般社団法人地方公会計研究センター
本書内容に関する正誤及び法令等の改正に伴う修正については 資格の大原ホームページの 書籍サイト http://book.o-hara.ac.jp/ をご覧ください 上記サイトに掲載されていない事項に関するお問い合わせや 本書内容に関する詳細な解説及び指導は行っておりません あらかじめご了承ください 地方公会計教科書 ( 応用編 ) 発行年月日平成 28 年 6 月 1 日初版発行 著者一般社団法人地方公会計研究センター学校法人大原学園大原簿記学校 発行所大原出版株式会社 101-0065 東京都千代田区西神田 2-4-11 TEL 03-3292-6654 印刷 製本株式会社メディオ 落丁本 乱丁本はお取り替えいたします 定価は表紙に表示してあります 許可なく転載 複製することを禁じます ISBN978-4-86486-360-5 C1034