根の吸水モデル

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推庶莘
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1 平成 9 年度農業農村工学会土壌物理研究部会研究集会不飽和土中の水分溶質移動モデルの研究と普及午後の部普及編 HYDRUSにおける根の吸水モデルと今後の課題諸泉利嗣岡山大学保健環境センター環境安全部門根の吸水モデルの概念土 - 植物 - 大気連続系 (SPAC) における水の流れは, 生理学的な作用を無視した, 全く物理学的な現象として考えられ, 植物の地上部での蒸散が吸水能力として規定され, その条件に従って地下部での根の吸水が誘発されるという概念でモデルが構築されている HYDRUS で使用されている根の吸水モデルは, 土がある気象条件下で植物の要求水量を供給できなくなるとき, 可能蒸散量に対して ( 実 ) 蒸散量が減少する過程を表現する気象条件可能蒸散 (T p ) 可能蒸発根の吸水モデル ( 吸水量減少モデル ) 2

2 HYDRUS における根の吸水モデル根の吸水 : 土中の水分環境, 実蒸散の推定実蒸散に与える溶質の影響, 根による溶質吸収 Richards 式 ( 次元 ): θ h K = K + S t z z z () h : 圧力水頭 [L],θ : 体積含水率 [L 3 L -3 ],t : 時間 [T],z : 鉛直座標 [L],K : 飽和透水係数 [LT - ],S : 植物根からの吸水強度 [L 3 L -3 T - ] である. 根の吸水強度 S は, 植物の根による単位時間, 単位体積あたりの吸水量と定義される 3 Feddes ら (978) は, 吸水強度 S を最大吸水能 S p [L 3 L -3 T - ] と吸水強度の制限因子となる圧力水頭の無次元吸水関数 α(h)( 水ストレス応答関数 ) の積として, 次式で表している Sh ( ) = α( hs ) P, α( h) S p は気象条件のみで決まる可能蒸発散速度 T p [LT - ] の関数として S p = bzt ( ) で与えられる b(z) [L - ] は正規化された根密度分布であり, 根群域を深さ方向に積分するとになる作物の実蒸散速度 T a は, 吸水モデルで仮定された式 (2) の吸水強度 S を根群域で積分して次式で与えられる T = Sdz = T α ( h) b( z) dz a Lr p p Lr (2) (3) (4) ここでは, 作物体内における水分の貯留量はT a に対して無視できるもの仮定している HYDRUSにおける実蒸散速度とは, 計算値であり, 測定値ではないことに注意してほしい 4

3 P Ppt P2H P2L P3 吸水関数 α(h) Potatoes [Wesseling,992] -Feddesモデル,S -型関数モデル Sugar Beet [Wesseling,99] Wheat [Wesseling,99] () Feddesのモデルパラメータ Pasture [Wesseling,99] Corn [Wesseling,99] Feddesモデルは Alfalfa [Taylor, 根群域における根の吸水量を and Ashcroft,972] , 各点の土中の圧力水頭 -5-8 Beans ditto に依存して与える Cabbage Feddes モデルの各パラメータの意味を図に示す Canning Peas Celery P : 根が土から吸水を始める上限の圧力水頭 Grass Lettuce Popt: 根による吸水量が最大 Tobacco ( 可能蒸散量 -5 ) となる上限の圧力水頭 Sugar Cane-tensiometers Sugar Cane-blocks P 2 H: 可能蒸散量が Sweet Cornr2Hのときの, 根による吸水量が最大となる下限の圧 Turfgrass 力水頭 Onions-early growth Onions-bulbing time Sugar Beets P 2 L: 可能蒸散量が Potatoes r2lのときの, Carrots 根による吸水量が最大となる Broccoli-early Broccoli-after budding Cauliflower 下限の圧力水頭 Lemons Optimal Oranges uptake P 3 : 根が吸水を停止する下限の Deciduous Fruit Avocados Grapes-early seasons 圧力水頭 HYDRUSでは, 異なる植物に対するこれらのパラメータの値が, データベースとして与えられている a(h) Wilting. Grapes-during maturity Strawberries Cantaloupe Tomatoes Bananas -5-6 P P 2L -8 P 2H POpt P Corn-vegetative period Pressure head Corn-during ripening Small Grains-vegetative period Small Grains-during ripening Water logging. r2h: P 2 H を与える可能蒸散速度 (LT - ) ( ここでは.5 cm/day に設定 ). r2l: P 2 L を与える可能蒸散速度 (LT - ) ( ここでは. cm/day に設定 ). この 2 つの入力パラメータにより,P2 を可能蒸散量の関数として変数として与えることが可能となる ( より高い蒸散量では P2 は増加する ) HYDRUS では, この入力した可能蒸散量の上下限値に対して, 下に示す線形補間によって P2 を決定する r2l<t p <r2h のとき P2L P2H h= P2 H + ( r2 H Tp ) r2h r2l (5) T p <r2l のとき h = P2L.8 T p >r2h のとき h = P2H a(h).6.4 Wilting. Optimal uptake Water logging. -6 P 3 P 2L P 2H POpt P Pressure head 6

(2) S 型関数モデルのパラメータ van Genuchten (987) は,Feddesモデルを拡張し,

4 P5 = -8 cm; p3 = 3 p5 = 5% reduction in root uptake rate

(7) Head at which 5% reduction occurs = -8 cm -2-5 - -5

4 (2) S 型関数モデルのパラメータ van Genuchten (987) は,Feddesモデルを拡張し, 水ストレスだけでなく, 塩ストレスに対しても適用できるストレス応答関数として,S 型関数モデルを提案した Additive model: α ( hh, φ ) = h+ hφ + h5 p (6) a(h) P5 = -8 cm; p3 = 3 p5 = 5% reduction in root uptake rate Multiplicative model: α ( hh, φ ) = h h φ + + h h p p2 5 φ 5 (7) Head at which 5% reduction occurs = -8 cm Pressure head (cm) h φ : 浸透ポテンシャル (=a i c i ), h 5 : 吸水量が可能蒸散速度の半分になる圧力水頭, h φ5 : 吸水量が可能蒸散速度の半分になる浸透ポテンシャル p, p, p 2, h 5,, h φ5: : パラメータ 7 HYDRUS における根の吸水モデル設定の流れ 8

(a) と (b) は, 根密度分布の入手が困難な場合の植生を考慮した解析に便利であると考えるが, 現象をどこまで正しく表しているか不明瞭さが残るまた, 長期的な解析の場合, 根密度分布の形状が変化しないという仮定には無理があるこのことは (c) にも言える (d)

5 使用上の課題. 根密度の分布 HYDRUS (-D) では, 次の4 種類の根密度分布を設定できる (a) 深さによらず一定で与える (b) 深さとともに直線的に変化するように与える (c) 計算期間中根密度分布が一定の場合は, 任意形状の分布を与える (d) 根が生長する場合は指数関数モデルで与える (a) と (b) は, 根密度分布の入手が困難な場合の植生を考慮した解析に便利であると考えるが, 現象をどこまで正しく表しているか不明瞭さが残るまた, 長期的な解析の場合, 根密度分布の形状が変化しないという仮定には無理があるこのことは (c) にも言える (d) は現象をかなり正確に表現できると考えるが, 必要なパラメータが多くなり, 現象に忠実であろうとした場合, パラメータの決定に困難さが残るいずれの分布も一長一短ではあるが, 最終的には, 利用できる根密度分布情報の有無によって, どの根密度分布を利用するかが決まる 9 計算例その根密度の違い ( 次元 ) 計算条件 : 土性:Silt loam 初期条件: 全層 (cm) -cm 可能蒸散速度:cm/day 下端境界: 自由排水計算期間: 日間根密度分布: 全層で均一 2 地表面で最大 (), 下端で最小 (), 直線で減少根密度の分布

6 全層均一 Profile Information: Water Content Theta [-] 2 直線で減少 Profile Information: Water Content Theta [-] Observation Nodes: Pressure Heads Observation Nodes: Pressure Heads Actual Root Water Uptake 実蒸散速度の比較.5..5 Actual transpiration rate (cm/day) Time (days) Actual Root Water Uptake

7 根密度分布関数 ()HYDRUS-D: * a * ( L x) bx ( ) = ae L L () t = L L L L e R m rt + ( m ) (8) (9) a*: フィッティングパラメータ,L: 地表面の x 座標,L m : 根の最大深さ,L : 生育期初期の根の深さ, r: 根の成長率 (2)HYDRUS-2D/3D: x z bxz (, ) = e m m px * p x x z z * + z m m x y z bxyz (,, ) = e m Ym m 軸対称流れ px * py * p x x y y z z * + + z m Ym m () () m, Y m m : 根が存在する最大位置 x*, y*, z*, p x, p y, p z : フィッティングパラメータ (x*, y*, z* は, 吸水量が最大となる位置 ) 3 計算例その 2 軸対称流れ x z bxz (, ) = e m m px * p x x z z * + z m m 根密度分布 m z* p z m x* p x 5cm 6cm,, 28cm 2cm p z = 2 p z = 3 p z = , Min=., Max=.65, Min=., Max=.443 _D root distribution: Pz= s, Root Water Uptake 4

土壌水分量の分布 p z = 2 p z = 3 p z =.5.34.54.73.

実蒸散フラックス Actual Root Water Uptake.8 p z =.6.

8 土壌水分量の分布 p z = 2 p z = 3 p z = Water Content - th[-], Min=.5, Max=.33 2_D root distribution: Pz= ontent, Time - days 5 実蒸散フラックス Actual Root Water Uptake.8 p z = Actual Root Water Uptake.8 2 p z = Actual Root Water Uptake.8 3 p z =

9 2. 蒸発散の配分根の吸水項を考慮した式 () を解くにあたり, 土壌面からの可能蒸発速度および植物からの可能蒸散速度を境界条件として指定する必要がある圃場において可能蒸発速度と可能蒸散速度が個別に測定されることは稀で, 通常は, 微気象観測や最寄りの気象観測所の気象データから Penman 式等を用いて可能蒸発散速度を推定することが多い可能蒸発散 (ET p ) をどのように可能蒸散 (T p ) と可能蒸発 (E p ) に配分するかが問題となる比較的簡単な方法としては, 葉面積指数 (Leaf Area Index) を利用する方法がある (Rithctie, 972; Campbell, 987) 葉面積指数は, 単位土地面積当たりに存在する葉の総面積 [L 2 L -2 ] で, 植物群落の特性を規定するのによく使用される 7 () Ritchie (972): E p Δ Rn = exp(.39 LAI)} Δ+ γ L (2) R n : 純放射量,Δ: 飽和水蒸気曲線の傾き,γ: 乾湿計係数,L: 水の蒸発潜熱 (2) Campbell (987): (3) 作物係数法 : T = ET { exp(.82 LAI)} T p p = K ET p c p Kc: 作物係数, 生育段階で変化 (3) (4) ETp = Tp + Ep (5) 8

10 計算例その 3 ET p を (2) の方法を用いて T p と E p に配分した場合 (D): ETp, Tp, Ep (cm/day) ETp Ep Tp LAI LAI Evapo.(E p, E a ), Transp.(T p, T a ) (cm/day) E a E p Time (days) T p T a day * a L x * ( ) b( x) = a e L () t = L L L + ( L L ) e R m rt m 9 まとめ () 根密度分布の与え方 (2) 可能蒸発散の可能蒸散と可能蒸発への配分 (3) Feddes モデルと S 型関数モデルに必要なパラメータの決定 Feddes モデルについては,HYDRUS に組み込まれているデータベースの値をできる限り利用するのが良いと考える S 型関数モデルに関しては, パラメータの決定が必要である (4) r2h,r2l の決定方法 (5) 植物による降雨遮断 (6) 解析モデル全般に言えることだが, モデルが精密になればなるほど, 必要なパラメータが多くなり, パラメータの決定や調整に多くの労力を要するようになるこれは, エンドユーザーの立場からは, 使いにくい解析ツールになってしまうかもしれない解析の目的, 要求される精度, 利用できる植生情報の有無を考慮して HYDRUS を利用することが, エンドユーザーの心得としては大事である 2

11 計算例おまけ S 型関数モデル -Additive- α ( hh, φ ) = h+ hφ + h5 溶質の初期の濃度 :. mmol/cm 3 根による塩の吸収無し Root Solute Uptake. Root Solute Uptake.2 2 根による塩の吸収有り p Root one Concentration Root one Concentration 参考文献 Feddes, R.A., Kowalik, P.J., and arandny (978): Simulation of field water use and crop yieldm John Wily & Sons, New York, NY. van Genuchten, M.Th. (987): A numerical model for water and solute movement in and below the root zone, Research Report N.2, U.S.Salinity Laboratory, USDA-ARS, Riverside, California. 筑紫二郎 (995): 植物の水環境と土壌 - 植物 - 大気系の水の流れ, 農土論集,8, 籾井和朗野坂治朗矢野友久 (992): 植物の根による吸水モデルに関する比較検討, 水文水資源学会誌, 5(3),3-2. HYDRUS のテクニカルマニュアル 22

目次第 1 章はじめに 1 1 本研究の目的 1 1 2 先行研究 2 1 3 本研究の構成 9 1 4 略語収集の方針 10 第 2 章原形分割単位 (1): 段 2 1 略語構成過程における原形分割 13 2 2 段の

目次第 1 章はじめに 1 1 本研究の目的 1 1 2 先行研究 2 1 3 本研究の構成 9 1 4 略語収集の方針 10 第 2 章原形分割単位 (1): 段 2 1 略語構成過程における原形分割 13 2 2 段の日本大学大学院文学研究科学位論文現代中国語略語研究構成過程上の制約と数詞の位置決定規則学位申請者星健一 Kenichi HOSHI 平成 25 年 11 月 7 日目次第 1 章はじめに 1 1 本研究の目的 1 1 2 先行研究 2 1 3 本研究の構成 9 1