骨髄腫とはどんな病気? 総合病院臨床検査室 鈴 香子

骨髄腫とはどんな病気? 総合病院臨床検査室 鈴 香子

内容 1. 骨髄腫概要 ( 定義 分類 診断基準 疫学 ) 2. 症状 3. 病態 4. 検査 5. 治療効果判定

内容 1. 骨髄腫概要 ( 定義 分類 診断基準 疫学 ) 2. 症状 3. 病態 4. 検査 5. 治療効果判定

定義 形質細胞が単クローン性に増殖する リンパ系腫瘍 どういった症状 病態となるのか

血球の分化 成熟 骨髄 赤芽球系赤芽球赤血球 末梢血 単球系単芽球単球 顆粒球系骨髄芽球 好中球 造血幹細胞 骨髄系 分化 好酸球系骨髄芽球好酸球 好塩基球系骨髄芽球好塩基球 成熟 巨核球系巨核芽球血小板 B 細胞系 B リンパ芽球 B 細胞形質細胞 リンパ系 T 細胞系 T リンパ芽球 T 細胞 NK 細胞系 NK リンパ芽球 NK 細胞

骨髄腫の分類 国際骨髄腫作業部会 (International Myeloma Working Grop:IMWG) による診断基準が広く用いられている 1MGUS(Monoclonal Gammopathy of Undetermined Significance) 2 無症候性骨髄腫 3 症候性骨髄腫 4 症候性非分泌型骨髄腫 5 骨の孤 性形質細胞腫 Asymptomatic Myeloma Multiple Myeloma Nonsecretory Myeloma Solitary Plasmacytoma of Bone 6 髄外性形質細胞腫 Extramedullary Plasmacytoma 7 多発性形質細胞腫 Multiple Solitary Plasmacytoma 8 形質細胞白血病 Plasma Cell Leukemia

診断基準 疾患名 M 蛋白骨髄中形質細胞臓器障害その他 MGUS 血清 <3g/dl 率 <10% なし 無症候性骨髄腫血清 3g/dl 率 10% なし 他の B 細胞増殖性疾患が否定されること 症候性骨髄腫血清 (and/or) 尿 :+ 増加 (10% 以上 ) または形質細胞腫 あり 症候性非分泌型骨髄腫 清および尿 :- 率 10% または形質細胞腫 あり 骨の孤 性形質細胞腫 血清 (and/or) 尿 :- 増加一ヶ所の骨破壊 なし 髄外性形質細胞腫血清 (and/or) 尿 :- 髄外腫瘤なし 正常骨髄病変部以外は正常な骨所 正常骨髄正常な全 骨所 多発性形質細胞腫 血清 (and/or) 尿 :- 一ヶ所以上の骨破壊または髄外腫瘤 なし 正常骨髄正常な全 所 形質細胞白血病 末梢血中形質細胞 >2.000/µl 球分画中形質細胞 率 20%

多発性骨髄腫 ( 発 頻度 年齢 性別 ) 日本血液学会では人口 10 万人あたり3 人に発症 年間 4000 人前後の死亡者数 全造血器腫瘍の約 10% 発症率 死亡率ともに年々増加傾向 発症年齢は60 歳がピーク 40 歳未満の発症はまれ 男性 > 性

年齢階級別死亡率男

内容 1. 骨髄腫概要 ( 定義 分類 疫学 診断基準 ) 2. 症状 3. 病態 4. 検査 5. 治療効果判定

症状 骨痛 ( 腰背部痛 ) 悪心 倦怠感 貧血

内容 1. 骨髄腫概要 ( 定義 分類 疫学 診断基準 ) 2. 症状 3. 病態 4. 検査 5. 治療効果判定

多発性骨髄腫病態 1 骨融解 2 骨機能低下 3M 蛋白血症

正常 骨髄 末梢血 形質細胞 形質細胞 形質細胞 形質細胞 形質細胞

腫瘍化 骨髄 末梢血 形質細胞 形質細胞 形質細胞 形質細胞 形質細胞 2 骨機能低下 3M 蛋白血症 1 破骨活性化因子 骨融解

1 骨融解 破骨細胞活性化因子 (OAF) により破骨細胞が活性化 骨融解 圧迫骨折 病的骨折高 Ca 血症

2 骨機能低下 骨髄で腫瘍細胞が増殖 正常な血球産生抑制 貧血 白血球減少

3M 蛋白血症 多量の M 蛋白増加 総蛋 上昇 = 過粘稠度症候群 正常免疫グロブリン低下 = 易感染性

多発性骨髄腫による臓器障害 CRAB Calcium elevation Renal dysfunction Anemia Bone lesion Ca 値の上昇腎機能障害貧血骨病変

内容 1. 骨髄腫概要 ( 定義 疫学 ) 2. 症状 3. 病態 4. 検査 5. 診断基準 6. 治療効果判定

検査所 特徴 血液検査 RBC: Hb: PLT:( ) 生化学検査 TP: Alb: Ca: LD: Cre: BUN:

骨髄像 ( 形質細胞 )

末梢血液像 ( 形質細胞 )

末梢血液像 ( 連銭形成 )

遊離軽鎖フリーライトチェーン (FLC) 軽鎖 (L 鎖 ) 細胞外へ 重鎖 (H 鎖 ) κ 鎖 λ 鎖 正常免疫グロブリン

Bence-Jones 蛋白 軽鎖 (L 鎖 ) L 鎖のみ 重鎖 (H 鎖 ) 正常免疫グロブリン Bence-Jones 蛋白

血清蛋白分画 正常蛋白分画 多発性骨髄腫患者蛋白分画 Mpeak

免疫電気泳動

免疫固定法 初診時 CR( 完全寛解 ) SP G A M κ λ SP G A M κ λ

免疫グロブリン定量 (IgG IgA IgD IgM IgE) MM 割合 α 鎖 IgA IgD 4% IgM 0% γ 鎖 IgG 重鎖 δ 鎖 IgD µ 鎖 IgM 軽鎖 κ 鎖 /λ 鎖 BJP IgA 22% BJP 13% IgG 61%

染色体分析 検査項目 検出対象異常 IgG-FGFR3 t(4;14) 転座 t(4;14)(p16;q32) 量化学療法の有効性低い IgH-MAF t(14;16) 転座 t(14;16)(p32;q23) t(4;14) と並び予後不良

画像診断 骨の抜き打ち像 (punched out lesion)

多発性骨髄腫病期分類 International Staging System(ISS) β2 ミクログロブリン (mg/l) 5.5 3.5 StageⅢ StageⅡ StageⅠ 3.5 (g/dl) アルブミン

内容 1. 骨髄腫概要 ( 定義 分類 疫学 診断基準 ) 2. 症状 3. 病態 4. 検査 5. 治療効果判定

治療効果判定 M 蛋白 骨髄中 clonal plasma cell(pc) その他 scr(stringent CR) 厳密完全寛解 免疫固定法 ( 清 尿 ):- 5% 未満 軟部形質細胞の消失 FLC 比 (κ/λ) が正常 免疫組織化学 or 蛍光抗体法で骨髄中に PC を証明しない CR(complete response) 完全寛解 免疫固定法 ( 清 尿 ):- 5% 未満 VGPR(very good partial response) 非常によい寛解 免疫固定法 ( 清 尿 ):+ 蛋白電気泳動 :- 90% 以上 M 蛋白減少尿中 M 蛋 100mg/24h 未満 PR(partial response) 部分寛解 血清 M 蛋白が 50% 以上減少尿中 M 蛋 200mg/24h 未満 SD(stable disease) 病勢安定化 上記のいずれの基準も満たさない場合

症例

症例 1 主訴 : 息切れ 左胸部痛 67 才女 基準値 基準値 WBC 35-98 112 10 2 /μl TP 6.7-8.3 8.7 g/dl RBC 男 420-570 女 370-500 309 10 4 /μl Alb 3.4-5.8 3.3 g/dl Hb 男 13.5-17.5 女 11.0-15.3 9.5 g/dl Ca 8.5-10.2 9.6 mg/dl Ht 男 39.0-52.0 女 33.0-45.0 30.7 % LDH 119-229 407 IU/l PLT 13.0-37.0 27 10 4 /μl BUN 8.0-22.0 11 mg/dl Cre 0.6-1.2 0.7 mg/dl PT-INR 1.13 APTT 20.0-38.0 23.7 秒 IgA 定量 62-370 18.0 mg/dl Fib 150-500 *** mg/dl IgG 定量 607-1879 4381 mg/dl FDP 0-5.0 *** μg/ml IgM 定量 43-300 43.0 mg/dl Dダイマー 0-0.5 *** μg/ml FLC κ/λ 0.248-1.804 1.397 末梢血形質細胞 0.0 2.0 % FLC κ 2.42-18.92 1.76 mg/l 骨髄形質細胞 0.4-3.9 43.1 % FLC λ 4.44-26.18 1.26 mg/l MM IgG-κ type 蛋白分画アルブミン 62.0-71.0 44.1 % α1-g 2.8-4.1 3.1 % α2-g 5.7-9.9 5.7 % β-g 6.1-10.7 5.9 % γ-g 9.0-18.3 41.2 %

症例 1: 免疫固定法

症例 2 主訴 : 腰痛 84 才女 基準値 基準値 WBC 35-98 51 10 2 /μl TP 6.7-8.3 11.0 g/dl RBC 男 420-570 女 370-500 306 10 4 /μl Alb 3.4-5.8 2.7 g/dl Hb 男 13.5-17.5 女 11.0-15.3 10.1 g/dl Ca 8.5-10.2 8.5 mg/dl Ht 男 39.0-52.0 女 33.0-45.0 29.9 % LDH 119-229 231 IU/l PLT 13.0-37.0 17.1 10 4 /μl BUN 8.0-22.0 17 mg/dl Cre 0.6-1.2 0.74 mg/dl PT-INR 1.05 APTT 20.0-38.0 26.4 秒 IgA 定量 62-370 26.0 mg/dl Fib 150-500 346 mg/dl IgG 定量 607-1879 6222 mg/dl FDP 0-5.0 27.2 μg/ml IgM 定量 43-300 23.0 mg/dl Dダイマー 0-0.5 13.6 μg/ml FLC κ/λ 0.248-1.804 6.990 末梢血形質細胞 0.0 6.0 % FLC κ 2.42-18.92 47.60 mg/l 骨髄形質細胞 0.4-3.9 53.0 % FLC λ 4.44-26.18 6.81 mg/l MM IgG-κ type 蛋白分画アルブミン 62.0-71.0 32.1 % α1-g 2.8-4.1 2.4 % α2-g 5.7-9.9 6.6 % β-g 6.1-10.7 6.7 % γ-g 9.0-18.3 52.2 %

症例 2: 免疫固定法

ご静聴ありがとうございました